「自衛官募集のため」“市民の個人情報”を無断提供…自治体の運用ルールに“法的根拠”なし? 問題点を弁護士が解説 3
「自衛官募集のため」“市民の個人情報”を無断提供…自治体の運用ルールに“法的根拠”なし? 問題点を弁護士が解説 3
「個人情報保護法ガイドライン」とも矛盾
個情委は、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」(2022年4月改訂)において、「具体的な情報の利用又は提供に着目せず行政機関等の包括的な権能を定めている規定がある場合に当該規定のみに基づいて行う個人情報の取扱いは、『法令に基づく場合』には当たらない」(5-5-1)と説明している(※)。先に述べた個情委自身の見解は、この説明と矛盾すると言わざるを得ない。
※個人情報保護法ガイドライン(行政機関等編)P.29参照
日弁連は、「個人情報保護委員会に関する個人情報保護法の改正及び運用の改善を求める意見書」(2025年2月20日)において、自治体の自衛隊への個人情報の提供に関して、「個情委の個人情報保護法の解釈は場当たり的になっている疑いがある」と批判している。
さらに、個情委の間違った見解を前提した場合でも、個人情報保護法との関係で、個人情報の提供が違法にならないということにとどまり、各地方公共団体の判断として提供に応じるかどうかは自主的に決めることができる。
自治体による自衛隊への名簿提供に関して、個情委から、この点についての言及はされておらず、個人情報の保護を第一の任務とする個情委の見解として明らかにバランスを欠く不当かつ不適切なものである。
本来強制力のない提供要請であるにもかかわらず、地方公共団体が提供を拒否しにくい状況になりつつあることは、大変懸念される事態である。
「プライバシー侵害、思想・良心の自由の侵害」の問題(個人情報保護法69条2項)
上述した個人情報保護法69条1項の例外として、「本人の同意があるとき」には個人情報を目的外で利用・提供することが許される(同法69条2項1号)。
自治体が保有個人情報を提供することができるとしたら、その根拠は、この規定に基づく「本人の同意」以外にはないと考えるべきである。
そうすると、同意を得ないで自衛隊に対して個人情報を提供することは、「プライバシーに係る情報」を侵害し得ることになり(最高裁平成15年(2003年)9月12日判決参照)、思想・良心の自由の侵害にもつながり得るものと言える。
この点について、大阪府交野市、岡山県岡山市など一部の地方公共団体では、ホームページ上で、自衛隊への情報提供を希望しない者は「除外申請」できるとしている。
この方式(オプトアウト方式(※))では、本人の同意を得たことにはなり得ない。そもそも行政機関等に対する規律には、個人情報取扱事業者のようなオプトアウトを許容する規定(法27条2項参照)がない。それに加え、除外申請をした者の思想信条を推知する材料として使われることにもなりかねない。
※本人の明確な同意がなくても、本人が拒否しないうちは、個人情報の外部提供を可能とする方式
あるいは、広報誌で、除外申請できることを周知している自治体もある。しかし、HPをいつも見ている住民が少数であるのと同様に、自治体の広報誌を細部までしっかりと読んでいる住民も少数である。
それ以前に、そもそも、ホームページや広報誌で周知したからといって、本人の同意(黙示の同意)を得たということにはまったくならないのは自明の理である。
保有個人情報の自衛隊への提供を「本人の同意」によって行おうとするのであれば、本人たる住民一人ひとりに適切な説明が与えられ、能動的な同意が得られた上でなければならない。このことを自治体は十分に理解する必要がある。

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