「自衛官募集のため」“市民の個人情報”を無断提供…自治体の運用ルールに“法的根拠”なし? 問題点を弁護士が解説 1
「自衛官募集のため」“市民の個人情報”を無断提供…自治体の運用ルールに“法的根拠”なし? 問題点を弁護士が解説 1

3月26日、岐阜県岐阜市在住の高校3年生が、同市と国を相手取って国家賠償請求訴訟を岐阜地方裁判所に提起した。
自衛官募集専用のXアカウントがある
原告は、岐阜市が防衛省・自衛隊からの求めに応じ、18歳を迎える市民の個人情報を本人の同意なく提供し、それを基に自衛隊が入隊勧誘のダイレクトメールを送付したことが、憲法13条で保障されたプライバシー権の侵害にあたること等を主張している。
自衛官募集のために自治体から自衛隊へ個人情報を提供することに関する訴訟は、2024年3月に奈良地裁に提起されたものに次いで2件目となる。
市町村が、自衛隊から入隊適齢者の情報提供を求められた場合、それに応じる形で、適齢者住民(満18歳、満22歳)の個人情報を自衛隊に提供することは、法的観点から許容されることなのか。元総務省自治行政局行政課長、神奈川大学名誉教授で、日弁連の「憲法問題対策本部」の委員を務める幸田雅治弁護士が解説する。(本文:幸田雅治)
閣議決定を受け、防衛省・総務省の自治体への「通知」により運用
そもそも、市区町村による自衛隊への個人情報の提供は、どのような「法的根拠」の下で行われているのか。
自衛隊法97条1項は「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う」と規定している。
また、同法施行令120条は、「防衛大臣は、自衛官の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」と規定している。
2021年12月18日に「令和2年の地方からの提案等に関する対応方針」(以下「2021年閣議決定」という)が閣議決定された。この閣議決定では、「自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要な資料の提出を防衛大臣から求められた場合(自衛隊法97条1項及び同法施行令120条)については、市区町村長が住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和2年度中に通知する」と定めていた。
そして、2021年閣議決定を受けて、防衛省・総務省は、各都道府県市区町村担当部長宛に「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について」(2021年2月5日付け)通知を発出した。
同通知の内容は以下の通りである。
1. 自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる情報(氏名、住所、生年月日及び性別をいう)に関する資料の提出は、自衛隊法97条1項に基づく市区町村の長の行う自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務として自衛隊法施行令120条の規定に基づき、防衛大臣が市区町村の長に対し求めることができる
2. 上記の規定の募集に関し必要な資料として、住民基本台帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法(以下「住基法」という)上、特段の問題を生ずるものではない
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